東京タワーのある街で。(神谷町)1
瑠璃光寺周辺の旅

文:つつみみき

今日訪れたのは日比谷線は「神谷町駅」。ここから東京タワーのまわりをぐるりとまわり、東京タワーの真下に位置するお寺や周辺の街並みを紹介します。

 

東京タワーのある町で。

わたしは日比谷線をよく利用する。

中目黒から北千住に至るまで、この路線は「利便性」のようなものを一駅一駅に蓄えているような路線で面白い。おしゃれ好きな若者から、遊びを尽くした大人たちまでもがここに集まる。食事も美味しく、文化に富んでおり、日本人のみならず外国人からも評判を得ている。

政治の中心に位置し、サラリーマンたちが行き交う路線であり、一方で問屋も多く集中している。歌舞伎などの伝統芸能はもとより、電気街を屯するマニアたちが電気やアニメといったあたらしい文化を支える。本当にこの路線は一言ではいいあらわせない。まるでこの路線は「東京」そのものを写す箱みたいだ。

今は日本で一番高い電波塔であるスカイツリーも眺めることはできるが、かつての東京一の電波塔、東京タワーも忘れてはならない。古くから親しまれてきたあの赤い鉄塔は、東京の「顔」といっても過言ではない。中目黒の駅から4つ目、今回わたしは、東京タワーがある神谷町に降り立つことにした。

日比谷線をよく利用するわたしがあまり利用したことの無い駅が今回出会った神谷町駅だった。以前、仕事で下車したことが一度くらいはあったものの、駅の近くで引き返しまた別の駅へと向かったものだからこの街をあまり知らない。

 

今日の目的は東京は神谷町から降りて、東京タワーの真下に位置するお寺瑠璃光寺へでかける。東京タワーの真下でお墓参りなんて、ちょっとワクワクする。

そうだ。333メートルの赤い塔の下をぐるりと回ってでかけてみよう。どんな街に出会えるのだろう。慣れない階段を、改札を抜け、改札でてすぐの黄色い「← 東京タワー」横眼に1番の出口を目指した。

 

階段をのぼり大通りが広がった。

道なりに進むとすぐ白い建物の上に東京タワーが顔をだす。

 

あぁ・・・

もう、わたしはこの塔のお膝元にいるのだ。それはこの旅のスタートをしっかりと切った合図のようでいて、なんとなく安心した思いに変わる。いつも旅のはじまりはすこしのワクワクと緊張感を含んでいる。小説を読み始めるときとなんだか似ている。

 

ビルとビルの間の自然

この町をどうやって歩いてみようか。

道の反対側をふと見ると八幡神社の鳥居が目にはいる。ビルとビルの間に挟まれた神社でありながら、鳥居の向こうに続く石段が、神聖な雰囲気を漂わす。自ずと足が向く。よし。登ってみよう。

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年月をかけた石段にはうっすらとコケが生えている。

 こういう神社の石段は登ってみると、すこし手前に斜めっていたり、雪が降っていたら滑ってしまいそうだな、なんて思わすような不安定なものが多い。それはきっと、こういうふうに一段飛ばしなどしないで、大切に一歩一歩踏みしめて登るものだからなんだろうなとわたしは心の中でいつも思う。この石段を登る先は、なにが待っているのだろう。ちょっとした好奇心を抑えて、神聖な場所へ向かう心の準備をさせるみたいだ。てっぺんまでのぼると、狛犬の待つもうひとつの鳥居をくぐる。

 

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まるで「となりのトトロ」に出てきそうな古そうでそれでいて温かみのある社が目にはいる。ビルに囲まれた場所に、ここだけ木々に囲まれた社がひとつ。小さな広場の周辺にはベンチがいくつかあり、参拝したひとびとが、都会の喧騒から外れてここに腰掛けて息をつく、そんなストーリーが見えてくるようだ。とても優しい神社だ。

参拝者がひとり、そしてまたひとり。多いわけではないのだけれど絶えず、訪れて手を合わせる。あとから調べたところ、ここの神社は西久保八幡神社といってNHKの大河ドラマでも放送された浅井三姉妹の三女『お江』ゆかりの神社で、お江自身が関ヶ原の合戦へと向かう夫、秀忠と舅である家康の必勝祈願したことで知られるという由緒ある神社だったそう。なんというパワースポット!

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また、この社殿の裏手斜面には縄文時代のものと思しき貝塚が良好な状態で残っていたそうだ。

自然が守られているということは、歴史を守っていることなのかもしれない。しかし1000年もの歴史を蓄えることはそれほど容易なことではないだろう。ふと、そんな気がした。

 

 

 

美味しさと、たのしさ

神社を出て、もうすこし歩くと、『ANGELIC CAFÉ』 というニューヨークスタイルのカフェに出会う。

IMG_2881.JPGラップサンドやサンドイッチを売るこのカフェは、映画「セックス・アンド・ザ・シティ 」でおなじみ老舗ダイナーである「ジュニアーズニューヨーク」のフードを日本で唯一扱っているお店らしい。カップやプレートが愛らしく食べている時間ですら楽しい気分になる。コーヒーを飲んでいると、ヒゲを生やしているようなカップ。食べ終わっても楽しいイラストでまた楽しめるプレート。

 

店員さんといい、お店の中といい、よくあるカフェのようでいてところどころに配慮のあるお店でとても気持ちのいいお店だ。オーナーセレクトの本がテーブルに並べられゆっくりとした時間を過ごす。「あ、この本いいな。」そんな風にあっという間に時間が過ぎていく。

 
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ここの神谷町に着いて実はひとつ行きたいお店があった。麻布台は飯倉の交差点を少し入ったところにある。榎屋(えのきや)さんという”かりんとう饅頭”で知られたお店で、近くに行ったら食べてみたいなと思っていた。食べ物の話ばかり続いてしまうが、そうとも限らない。実は行ってみて初めてわかったのだけれど、このお店はかりんとう饅頭屋が本体ではなかったのだ。なんと書道教室を開いているお店だったのだ。

店内にはふたつ仕切られたうち、ひとつはお香や、お香立てなど趣味の良い素焼きなどが並ぶ。もう片側で饅頭が売られ、そのそばで美しい書が展示される。

なかなか書道教室を一見感じさせないそのお店はお店のかたと話をして初めてわかったことだった。ちょうどその日、教室の書道展を上の2階で催していると聞いて、訪ねてみたところ書道教室とは想像を超えたおもしろい世界が広がっていた。手ぬぐいの絵をモチーフに書を書いた生徒さんの作品があったり、石に和紙を貼りそこに季語を書いていくという作品があったりと、まさに自由な芸術がそこに広がっていた。なんてたのしい教室なのだろう。普段は書と書画といったものを教わる教室だそうだ。饅頭屋に来たことを忘れるくらい書道展に没頭した。一般の生徒さんが作ったものとはとても思えないほどの高い芸術性と出来栄えにしばし感動して時間を過ごしてしまった。IMG_2942.JPG

かりんとう饅頭のことをすっかり忘れそうになったけれど、これもまた美味しい。あったかい饅頭は、サクサクとした食感と心地よいトウキビの程よい甘さが癖になるおいしさだった。

書道教室にも感動して、饅頭の美味しさにも感動してほがらかな時間をすごした。お店もお店の方もとても優しくてここに来れてよかったと、素直に思えるお店だった。

駅から降りた時の緊張していた気持ちがどこへと飛んでいってしまった神谷町の街。降りたったときはビルの立ち並ぶ都会的な街であり、東京タワーを望むその街には随所に人の優しさやアイデアに富んでいて笑顔にさせてくれる居心地のいいお店がある。美味しいかりんとう饅頭もある!

自然を大切に守るパワースポットもある。わたしはこの街が好きになっていた。

 

東京タワーに近づいていく。ビルとビルの間にまっすぐにタワー見えた。見上げていたら、通りかかった海外の観光客と思われるスーツケースをひいたひとたちも立ち止まって見上げていた。

その隙間に瑠璃光寺がある。地図を片手に空と東京タワーのコントラストを目に焼き付けた。

 

- – - – 参照 – - – - - 

西久保八幡神社

〒105-0001 東京都港区虎ノ門5丁目10−14  電話 03-3436-2765

 

ANGELIC CAFE

〒106-0041 東京都港区麻布台1−7−1 菅野ビル1F  電話 03-6441-2624

 

榎屋 麻布本店

〒106-0041 東京都港区麻布台1-9-12  電話 03-3584-2353

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次回は、「 東京タワーのある街で2 」を紹介します。

 

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