成田・自然の豊かさを楽しむ霊園
成田メモリアルパーク周辺の旅

文:つつみみき

バスに乗って出会う

冷たい空気を忘れそうになるあたたかい喫茶店の店内で、わたしの腕時計がバスのくる5分前を示した。これから成田メモリアルパークという霊園に行く。事前に予約をすれば送迎の車もあるようだけれど、今日はすこし町も見て歩きたかったから送迎バスを待つことにした。1時間に1本ほどの送迎バスの時刻さえ調べておけば、この成田の街ではいくらでも時間を使って待つことができる。

自分の宗派ではないお墓参りを考える旅は、すこし不思議な旅だけれどミーハーな気持ちはまったく生まれてこず、真摯に向き合う気持ちが心に備え付けられているみたいだった。

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バスは成田駅のロータリーを抜け、町の大通りに出る。目の前にはショッピングモール行きのバス、そしてその後ろに続いたのは私の乗る霊園行きのバスだ。二台は同じ車道を進み、やがてY字に分かれてわたしたちを左の林道へ運ぶ。正直、ドキドキした。

その一本道の先に霊園があるのだ。ただ、ただ一本だけの道。食事、賑い、人の生活、人の息をたくさん帯びた市街から離れ、先祖たちの眠るその集落に向かっているのだということを実感していた。神聖な場所へ向かうことで自然と背筋がのびる。

 

 

 霊園の開かれた門が出迎える。

門のそばには大きい公園によく併設されるような管理事務所の施設、そして、バスは中で計4か所もの停留所にとまるそうだ。なんでも、ここは東京ドームでいう10個分の広さ。あまりにも中が広いので、バスで向かうことができるようだ。一つ目のバス停でわたしの斜め前方に腰を丸めて座っていたおばあさんがゆっくりと階段を転ばないように手すりにつかまりながら降りる。

ここから、おばあさんと誰かの大切な時間がはじまるのだろうか。おばあさんの背中がゆっくり、ゆっくりと歩みを進めるのをバスから見守った。

 

自然豊かさをたのしむ霊園

 成田メモリアルパークというのは名前からしてほんとうに大きな公園のようのようで驚いてしまった。墓場のイメージはまったく覆されていたのだ。青い空と、大きな魚みたいな雲、成田空港が近いこともあって、飛行機も見える。池もある。広大に広がる芝生がある。あずまやもある。見渡して見える木々は、桜だ。お花見をしたら本当にきれいだろう。ここの霊園内で春・秋彼岸会をはじめ、精霊流しもあるそうだ。そうか、、、ここで家族たちが、故人を大切に思う人たちが、集まりしのぶ。お墓参りというものが、眠る故人と生きる人間と仕分けしていたわたしの意識を変えていくようだった。

ひとは、亡くなったら死んでしまうけれど、こうやって同じ空のもとでこんな広い自然のもとで共にすることができるとおもうと、なんだか安心感がわいてくる。

死を迎えることは、孤独だと思っていた。生まれるときも、死ぬ時もそれはもちろんのことだ。だけど、すこし先の未来が安心や優しさに包まれるだけで、うまく言えないけれどあたたかい気持ちに変わった気がした。

さっきバスをゆっくりと降りたおばあさんも、この自然のなかで心を落ち着かせて故人を大切に偲び会話をしているのだろうか。そういう時間を描けるだけで、人はすこし心が強くなるものだ。

墓場を見渡すと、そこにはクリスチャンであろうと思われる墓石も、昔ながらの日本の墓石も多種多様に建てられている。なるほど、ここの霊園の良さはそういう宗派を問わない分、どういう場所に墓石を置きたいかという選択肢がひろがるところなのかもしれない。自然を存分に生かして、ガーデニングのできるお墓やバラ園を併設したりと工夫も凝らしている。

故郷のある場所に建てたいか、もしくは親戚の集まりやすい場所に建てたいか、この街なら空港だって近いから海外からだって訪れるのに便がいい。きっと集う人たちの居心地の良さを実現できるなら、お墓参りをもっと気軽な気持ちですることができるだろう。

広大な緑の広がる霊園を後にし、バスに乗り込む。青の空は薄紫色に溶け出し、木々のシルエットをつくる。ゆっくりと夕闇が夜を連れてくる。

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成田の駅から電車に揺られて今日をゆっくりと電車の窓の変わりゆく景色をみながら思い返す。成田賑う街で食べたうな重、、それから、こころも体もあっためてくれたウィンナーコーヒー・・霊園の空に浮かんでいたお魚みたいな白い雲。あぁ、いつのまにか、、、きょうの夕ごはんを頭に描いていた。「そうだ、帰ったら魚でも焼こうかしら。」

 

 

 

 

- – - – 参照 – - – - - 

成田メモリアルパーク

千葉県成田市成田1番地  電話 0476-22-2111

「京成電鉄 京成成田駅」または「JR線 成田駅」より 徒歩10分

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次回は、「 神谷町 | 東京タワーの周辺を歩く 」を紹介します。

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