仏壇について

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仏壇の中、仏具に関して

-寺院の世界を家に再現する-

仏壇を知る

普段私たちは、仏壇を先祖を祀るためのものだと思い込みがちですが、そうではなく、仏壇の本尊を祀るための入れものです。本尊は仏教の各宗派の根本的な考えを形にあらわしたものであり、象徴として祀られます。宗派によって異なる本尊を中心に置き、その両側には両脇仏を飾ります。同じ理由で両脇仏も宗派によって違います。仏壇の形はお寺を模しており、模様はその宗派のお話などが表現されています。
仏壇に先祖の位牌を祀るようになったのは、亡くなった人はすべて成仏し、仏になるとの仏教の考え方が根底にあるからです。ただし、浄土真宗では位牌は用いません。

⇒仏壇の構造

仏壇には、本尊を安置する須弥壇という場所があります。須弥壇は聖域を意味し、仏教の世界で中心にそびえ立ち、最も高い位置をあらわす須弥山をかたどっています。
仏壇はこの須弥壇を中心に構成されます。仏壇の扉はお寺の山門をあらわしたものです。内部は基本的に3段で構成されており、最上段である須弥壇の上に本尊を祀る「宮殿」があります。宗派によって本尊の数や種類も違い、仏具の置き方も変わってきますから、新しく仏壇を購入するときには、自分の家の宗派にあわせましょう。仏壇には本尊、位牌、両脇仏、過去帳(先祖の仏名、死亡年月日などが書いてあるもの)を置きます。供物のための仏具なども必要です。

⇒仏具の種類

一般的な仏具は燭台(灯明)、香炉、線香立て、花立て、茶湯器、仏飯器(炊き立てのご飯を盛って供える器)高坏(高脚のついた塗りの器。半紙を敷いて菓子や果物などの供え物を盛る)、読経に必要な教本、鈴、鈴台、鈴棒などがあります。
特に、香炉(香)、花立て(花)、燭台は三具足といって宗派を問わず、仏具として欠かせないものです。

仏壇の種類

-大きさや材質、安置する場所によって選びましょう-

仏壇の大きさや材質にはさまざまな種類があります。「上置型仏壇」は整理タンスの上や、押入れの上を使って置くタイプです。「地袋付仏間用仏壇」は、高さ1メートル位のもので、地袋付きの仏間に置きます。「台付型仏壇」は、高さが106センチ〜173センチ位までのもので、仏間や床の間に置きます。
仏壇は大きく分けて塗り仏壇(金仏壇ともいいます)と唐木仏壇の2種類に分けられます。
塗り仏壇は、全体に黒の漆塗りが施され、内部に金箔が張ってある仏壇です。おもにひのき、松、杉などが使われています。
全国各地に、塗り仏壇の産地があり、山形、新潟、白根など15の産地が伝統的工芸品の指定を受けています。
唐木仏壇は、黒檀や紫檀などの銘木とよばれている木材の美しい木目を生かした仏壇です。
唐木一般の特徴としては比重が重く、強度や耐久性にも優れている点があげられます。唐木仏壇は材料の使い方によって品質や値段が大きく違うので確認が必要です。
最近は、海外からの輸入品の割合が急激に増えています。

仏壇の安置場所を考える

仏教は十方どの方角にも仏様はいらっしゃるという考え方なので、安置する方向に吉凶はありませんが、一般的に真北を向けて安置はしません。おもな安置場所の説は次のとおり。

●南面北座説

仏壇を南に向けて置きます。これは南を向いて座る席が上座との考えからです。

●本山中心説

拝む人と仏壇の延長線上に宗派の本山を置いていっしょに拝む形をとる方法です。

●西方浄土説

仏壇を東向きに置き、西から拝むことで、極楽浄土がある西も拝むという考え方です。

また、直射日光の当たる場所や湿気の多いところ、冷暖房の風が直接あたる場所は避けましょう。
仏間がなければ、床の間や押入れの上部、整理タンスの上、また今のサイドボードなどの上に置いてもかまいません。なお、神棚がある場合は、神棚と向かい合わない位置に置きます。

仏壇を購入する

⇒菩提寺と相談する

仏壇の購入時期に良い悪いがあるという考え方は迷信です。時期はいつでもよいですが、ひとつの目安として、不幸があった場合は四十九日の法要までに用意します。それ以外は、お盆、お彼岸、年回忌m家の新築などを機縁として購入する場合が多いです。
仏壇と同時に購入する本尊は、菩提寺の宗派によってそれぞれ異なるので、事前に自分の家の宗派を確認し、菩提寺に相談してから購入しましょう。
仏壇を安置する場所が決まったら、その場所の高さ、巾、奥行き測ります。特に仏間に納める場合には、仏間の内側の寸法を性格に測っておきましょう。
仏壇の扉は観音開きで両側に開くので、扉を折り畳んで左右に開くスペースも必要です。事前に購入する仏壇を確認しましょう。

⇒開眼供養を行う

「開眼」には、「新たに仏像の眼を開く」という意味があります。新しい仏壇を購入したときに、菩提寺に依頼してその仏の霊を迎える儀式を「開眼供養」といいます。
お墓に魂を入れるという意味で、魂入れとか入仏式ともよばれます。本尊や位牌が「尊像」に生まれ変わることを目的としています。
仏壇を買い換える場合、古い仏壇は、寺か仏具店に頼んで供養をしてから処分します。
四十九日の法要の前に購入した仏壇は、忌明けまで使用しません。葬儀のときに白木の位牌は寺に納め、本位牌を新しく購入し、寺院で入魂供養をしてもらいます。忌明け後に仏壇に安置します。
住職に来てもらうのが困難な場合は、新しい本尊や位牌を菩提寺に持参して魂入れをしてもらい、持ち帰って仏壇に安置します。

仏壇の祀り方と拝礼

-仏壇は本尊を祀るもので、本尊は宗派により異なります-

本尊と宗派の違い

仏壇の中心は本尊です。本尊は仏教のそれぞれの宗派の根本的な考え方をあらわしたものです。
宗派により教義や仏教の理想の求め方が違うため、本尊は菩提寺の宗派によって異なります。
本尊の形式には、姿のある仏像と、絵像の掛け軸があり、寸法は、仏壇の内部の大きさにあわせて選びます。仏像には、木造仏像や、鋳造仏像などがあります。
本尊は菩提寺を通して本山からいただく場合もありますが、一般的には仏壇店で購入し、菩提寺の住職に魂入れをしてもらいます。本尊は、仏壇の中央にある須弥壇の上に安置します。

仏壇を祀る

⇒遺影を飾る

遺影を飾る場所は基本的には自由です。遺影は仏壇の真上や神棚付近を避け、仏間や居間の鴨居付近にかけるなどといわれますが、飾る方角などの決まりはありません。そもそも仏教の「しきたり」に、「写真を飾る」という、仏教誕生の歴史から見れば新しい行為は存在しません。
遺影は魂が宿る、といった礼拝対象物ではないので、処分する際も特別にするべきことはなく、そのまま処分してかまいません。
ただ、気になれば寺院にお焚き上げ供養をしてもらうか、塩で清めてから処分しましょう。

⇒宗派別の祀り方

宗派によって本尊や両脇仏、仏具の置き方なども変わってきます。
たとえば天台宗の本尊は阿弥陀如来が一般的ですが、釈迦如来、観音菩薩を祀ることもあります。両脇仏には向かって左に伝教大師、右には智者大師を置きます。
家の宗派がどのように飾るかを確認しましょう。

⇒香、花、灯明を飾る

香には線香と抹香があります。香には礼拝する者の身を清めるという意味と、仏様のご馳走という意味があります。
線香は、一度火をともすと燃えつきるまで芳香を放ち続けることから、命あるかぎりの仏への信仰と、自らが努力し続けることをあらわしています。
花は、仏の慈悲心をあらわすといわれています。左右一対が基本ですが、ひとつの場合は本尊に向かって左側に供えます。
灯明はろうそくの火のことです。仏の智慧の明かりをあらわしていて、心の闇に仏の智慧である光が差し込むことで悟りを開き、暗闇から脱出するという意味があります。1本の場合は本尊に向かって右側に供えます。

仏壇の始めと終わり

仏壇はお寺と同じです。なかには本尊がなければ意味がありません。仏壇自体は、仏教であればどの宗派も同じものを選べますが、それぞれの本尊を入れることで、その宗派の仏壇として完成します。
さて、仏壇や位牌や本尊はおもに仏壇販売店で購入しますが、買っただけではいくら形が寺院に似ていても、仏壇はただの箱であり、位牌や本尊はただの物です。そこで、僧侶にお願いして開眼法要をしてもらいます。これを「魂入れ」などといい、これにて初めて礼拝の対象となります。もし、僧侶に来てもらうことができない場合は自分で寺院に持ち込んで、魂入れをお願いすることも出来ます。
仏壇の魂入れですが、これ自体は祝い事となり、僧侶に渡す「開眼供養料」の水引きは紅白となります。一般的に魂入れは家族のみが立ち会います。また、年忌法事と同じ日に行うのであれば、慶事である開眼法要の飾りの後、すぐに年忌法要の飾りに取り替えます。

仏壇の処分

せっかく入手できた仏壇も、引越しの際など新しいものに替えたり、そもそも必要がなくなったなどの現代の住宅情報を反映した理由で処分する人が増えています。
とはいえ、すでに魂入れをすませているので、おいそれと簡単に粗大ゴミで処分というわけには行きません。そこで「魂ぬき」を僧侶にお願いします。これで再び仏壇はただの箱となります。
以前は菩提寺などで「お焚き上げ」の際にいっしょに燃やしてもらっていたのですが、現在は環境問題もあり、煙を出さずに処理ができる仏壇専門店などに引き取ってもらえます。

日々の供養の仕方

仏具や仏壇は日ごろからほこりがたまらぬよう、簡単なからぶき程度の掃除をしましょう。故人の命日やお彼岸、お盆の前など、年に何回かは念入りに掃除を行います。
念入りに掃除をする前に、本尊に合掌し、礼拝します。羽ぼうきや筆先で本尊や掛け軸などのほこりを払います。
仏具類は柔らかい布でからぶきしますが、花立て、仏飯器や茶湯器などは、内側、底などを丁寧に洗い、水けを残さないように乾いた布でふきとります。金具類は金属磨き剤を使って磨きます。
燭台についたロウも取り除き、香炉の灰なども燃え残りを除きます。漆塗りや金箔の部分は汗や手の脂がつかないように注意します。薄い布の手袋をはめるか布などを使い、手で直接触れないようにして毛ばたきでほこりを払い、ガーゼのような柔らかい布で軽くふきます。

⇒日々の礼拝を行う

礼拝は、朝は朝食前に、晩は夕食後にできれば家族そろって行うのが正式です。仏壇にお茶や花などを供え、毎朝晩に灯明をともし、線香をあげた後読経するのが基本ですが、場合によっては読経を省いてもかまいません。
ろうそくに点火する際、ライターでつけてもかまいません。最近はライターに限らずいろいろな点火道具があるので、どれを選んでもよいのですが、いずれの物でも仏壇専用と決めて使ったほうがよいでしょう。マッチを使用する場合は、マッチ消しを用意してください。消しくずを香炉の灰に突き刺したり、鈴の中に捨てるのはやめましょう。
仏壇へ礼拝することの意義は、今日の感謝と明日への活力を感じさせてもらうことです。
仏教においては、生きている毎日こそが大切なのであって、その間に、悔いのない努力を精いっぱいすることと教えています。
亡くなった先祖を供養することも大切ですが、もっと大切なことは、自分が生きている間、縁のあるまわりの人々に、仏様のように本当にやさしくしてあげることができるかどうかで、その勇気を与えてくれるのが本尊であり、先祖なのです。
そして、先祖に対して、心からの感謝の気持ちを持って、今日一日見守っていてください、とお願いするのが、日常の礼拝の最も重要な心がけです。

⇒礼拝の作法

・はじめに、仏壇の前に正座して、数珠があれば手にかけ、軽く一礼します。命日の先祖があれば供養します。
・ろうそくに火をつけ、その火で線香をともし香台に立てます。鈴を2つ打ち鳴らし、合掌します。
・宗派によりそれぞれの経を唱え、終わったら鈴を2つ打ち、合掌して深く礼拝します。2度目の鈴は読経しない場合は鳴らしません。
・最後に、手でろうそくの火をあおいで消し、軽く一礼して終わります。
仏壇には、菓子や果物、その季節の旬のものを高坏や小皿に盛ってお供えします。お土産や頂戴物はまずお仏壇にお供えし、「お下がり」を仏様とともにいただくよう心がけます。
仏壇の扉は、普段は開けたままで結構ですが、部屋の掃除の際には閉じてほこりを避けます。
宗派によって細かい作法は違いますが、最も大切なのは心です。まずは心を込め、手をあわせることが大切でしょう。

神式の場合

神道では神棚ではなく、御霊舎(祖霊舎)に先祖を祀ります。故人の霊は祖霊に加わって子孫を守り、家の守護神となるといわれています。
不幸があって、新たに御霊舎を買い求める場合は、五十日祭までに用意します。仏式の位牌のように霊璽を祖霊舎に祀ります。
五十日祭の忌明けに行う祭儀の際に、霊璽を御霊舎に移して礼拝する合祀祭という儀式が行われます。御霊舎には神鏡も納めます。鏡には先祖の霊が宿るとされています。
その他の神具には、灯明具一式、水器、土器、お神酒徳利一対、榊立て一対などです。毎朝、新しいお水を供えて灯明をともし、礼拝します。
なお、御霊舎は神棚よりも低い位置に置きましょう。

⇒拝礼の作法

ここでは、御霊舎や神棚の一般的な礼拝(神拝)の作法を説明します。まず、手と顔を清め、口をすすいだ後、神饌(洗米、水、塩の3品)を供えます。
次に、軽くお辞儀をしてから、2回深い礼をします。そして祓詞を奏上し、祖霊拝詞、神棚拝詞を述べます。
拝詞など難しいことではなく、心中に思っていることをお祈りしてもかまいません。
それから、ニ礼ニ拍手一礼をし、さらに軽く頭を下げて終わりです。「ニ礼ニ拍手一礼」だけして、祓詞、祖霊拝詞、神棚拝詞を省略してもかまいません。

キリスト教式の場合

⇒祈りは教会で

キリスト教では祈りの場は常に教会が中心です。したがってプロテスタントでもカトリックでも、家庭での祭壇の形や飾り方に決まりはなく、基本的に祈る人の思いがおける形を選びます。
お祈りの際に供物を捧げる習慣はありませんが、基本的に祈る人が祈りやすいように、好きな形で飾ります。棚の上などに花や故人の好きだった物を飾ったり、故人の写真を置いたりするのもよいでしょう。
日本では、仏壇など室内祭壇の習慣が一般的なためか、仏壇に似た家庭用の祭壇を用意しているキリスト教用品の専門店もあります。専門店や一般の仏壇販売店にキリスト教用の祭壇があるか聞いてみましょう。