寺町をあるく2
本郷さくら霊園周辺の旅
本郷さくら霊園を訪ねる
本郷さくら霊園は本郷通り、うなぎ縄手に面しています。 この通りも、この一帯も寺が多い町ですが、なかでもひときわ目を引くほど他にひけをとらない程、桜が美しいのはここの浄心寺です。中に入らずともその桜の美しさはこの一帯に美しさを放っており、ちかくを通った外国人がついその光景に写真を撮っていました。それほどとても豪華なのです。今日は少し小雨の降る曇り空でしたがそれでもさくらのピンク色がとても美しく絶景でした。
霊園からみる桜の風景はとても絢爛で、となりの浄心寺で咲かせているために霊園に落ち葉が落ちてきたり毛虫が上から落ちてくるという心配もないでしょう。
また今回本郷さくら霊園にもお邪魔することができたのですが、なによりも墓地らしい印象が払拭されるほどあたたかい雰囲気でした。
今まで描いていた墓地の印象は石材が「和型墓石」で石の色が灰色や黒といった下げたトーンのものが多いのですが、今回訪れた本郷さくら霊園は洋型墓石が多く、ピンク色のあたたかい色味の石材であったり、丸い球型のモニュメントをあしらったものや、中にはゴルフ好きのお父さんのためのゴルフの絵であったり、文字・形やデザインの自由さがある墓石ばかりでした。東京の狭い土地を利用していることもあり、区画の狭さはありましたが、お隣同志仲良く肩を寄せ合って並んでいるようでした。
和型墓石・洋型墓石にそれぞれの良さがありますが、このように宗派やデザインを問わない墓地・霊園であれば石材をデザインするというのは故人を映しているようで、創設者の故人への思いを感じました。実に新しい形です。時代を超えて墓石の形は変化をしており、その自由度は広がっています。
わたしの祖母や祖父のお墓は和型墓石の四角くて、黒いお墓ですが、母親から伝えられなければ祖母や祖父のことがわかりません。これから次の世代、そのまた次の世代へと継承していくのに名前だけではない、遺す思いやメッセージがあるとするならばお墓の存在というのは故人の眠る場所を超えたものへと印象を変えます。
わたしがお墓を建てるなら−
わたしの子供たちや、そのまた次の世代やさらにもっと次の世代へ、どんな言葉や、優しさを残してあげられるだろう。そう思うとお墓を継承させなければいけない子供たちへの負い目ではなく、お墓を建てることに意思や意味が込められると思いました。
「お墓を建てる」「お墓参りをする」これらを思うとき、世代をまたいで親から子への思い、または子から親への思いを感じることがあります。普段何気なく声をかけたり注意を促したりするような言葉をかけてあげられない分、その言葉は先立つものが残していくひとつの手紙であり指標なのかもしれません。「辛くなったらここにおいで。うれしいときもここにおいで。わたしはいつも見守っているから」お墓は語り合いの場所なのです。
季節の和菓子と
このあたりには、今はもうありませんが、夏目漱石の住まいがあり、この地で初めて漱石が筆をとったといわれています。いまは日本医科大学の敷地となっていますが、その場所になんともかわいい猫が塀を歩いているではありませんか。「我輩は猫である」を漱石が書いたことでその舞台であったその家が「猫の家」として親しまれたこともあってこんなモチーフになっています。実はここ、漱石が住む13年前には森鴎外が住んで文学活動に励んでいたそうなのです。
その細い道をまっすぐに、本郷通りと不忍通りを結ぶ通りにまで出ると、角に小さな和菓子屋さんを見つけます。「一路庵」と書かれたその看板のある建物の中に入ると入ってすぐの脇に慎ましく季節の和菓子のショーケースが、奥にもまた別の菓子を並べてありました。今日歩いて出会った桜を思い出すような、桜のこなしや、練切り、ゼリーが名前の書かれた木の札と丁寧に並べられていました。目で見る春、そして味わう春がここにありました。季節ごとにこの和菓子シリーズがあるようで、ここに並ぶ景色をまた楽しみに訪れたくなりますね。
一路庵で桜の花をいくつか買ってウキウキした気持ちでお店を後にしました。
東京医科大学の大きな病院を通り過ぎ、根津神社をまわり、赤の小さな鳥居の連なりを見に行きました。
165センチのわたしよりもすこし大きいくらいの赤い鳥居が連なって道を作っています。
本当にこのあたりは自然が豊かで気持ちがいいです。都心の喧騒を忘れて、穏やかな時間に帰ることができること、本当にお墓参りをするのにぴったりなのです。
根津神社を一周しまた、日本医科大学の通りを出て不忍通りまで歩きます。たい焼きでも食べて帰ろうか。「根津のたい焼き」はこのあたりでは有名なお店です。軽い生地とあんこたっぷりのたい焼きは行列にいつも行列ができるほど。たい焼きを頼むとテンポよくまわりのはみ出た部分をハサミで整えて出してくれます。丁寧な仕事を感じますね。
上野や、谷根千エリアにほど近いこの街は古き良さと、人々の暮らしやすい自然を残しています。
東大赤門前霊園を旅した本郷にほど近い場所ですが、ここならではの良き景色がありました。良い商店も、寺町の風情も、そして現代の医療も学問もあって非常に居心地のいい街でした。
最後に本郷通り沿いに、法事に利用できるというお店を見つけたので紹介します。「江戸蕎麦匠庄之助 肴町長寿庵」というお蕎麦屋さんで創業83年という老舗のお店です。訪れたのが水曜日で定休だったのですが蕎麦の味がうまいという話を聞いたことがあります。またよく法事に使われる場所のようで、そういうこともポイントですね。
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